◆はじめに
欧米諸国に遅れることはや数ヶ月、日本でも「ゴジラVSコング」が封切られた。
懐かしき20世紀。1962年に封切りの「キングコング対ゴジラ」以来、60年ぶりに両獣が共演する。
これは見に行かねばなるまいと、映画館に足を延ばした。
レイトショーで、1300円払った。コロナワールドの重低音×振動上映というやつ。
今日び1300円といえば少々高めのラーメン程度の値段である。それっぽっちで、これほどの大作を見られるのだから、良い時代になったものである。
ちなみに、1960年の公務員大卒初任給は1万円。ラーメンは50円程度である。だからどうだというわけではないが。

ちなみに管理人は生まれてもいません。
生まれる前からの時を超えて、コングVSゴジラが現代によみがえる。
◆果たしてどちらが勝ったのか?
センシティブな問題である。
この手の「VS」モノに付きまとう宿命といってもいい。
果たしてどちらが強いのか。コングか、ゴジラか。あちらを立てればこちらが立たない。
どちらが勝ってもどっちかのファンは不満を覚える。
だから、たいてい2大巨頭の対決は前半で水入りさせ、時には対決すらしないで共通の敵をボコる。
この映画のいいところは、そのようなナァナァな決着を良しとしなかったことにある。
結論から言えば、ゴジラの圧勝である。
第1ラウンドの海上戦。ゴジラの圧勝である。エヴァ2号機のようにイージス艦八艘飛びをやってのけるコングといえど、所詮は肺呼吸しかできない陸上型哺乳類である。海上で海棲爬虫類たるゴジラにかなうべくもない。勝負をしたけりゃエラ付けてこいと言わんばかりに、コングを海中に引き込んだゴジラの勝ち。
艦隊の爆雷攻撃と死んだふり作戦がなければ、コングは海の藻屑と消えていたであろうことに疑いの余地はない。
続く第2ラウンド。香港という巨大ビル群の中で行われる陸上戦、コングにとってはホームグラウンドといってもいい。ゴジラの御先祖様のドロップ品である背びれを加工したアックスで武装して、モンスターハントにいざゆかんとコングが吠える。これはコングが優勢か、と観客の誰もが思ったはずだ。
しかし、御先祖様冒涜アックスにゴジラはマジ切れ。放射火炎がアックスに吸収されると見るや即座に戦術を変更。
火炎放射のみならず、しっぽをふる・かみくだく・一本背負い・ふみつけ・みだれひっかき・たいあたり等々、自身の身体能力を縦横無尽に駆使。
極めつけは四足歩行による格闘戦。こんなに素早く力強いゴジラは初めて見た。VSヘドラで空を飛んだ時以来の衝撃といっていい。
追い込まれたコングがビルの隙間を縫うように逃げる。待ってましたとばかりに放射能火炎の追撃で足場のビルを薙ぎ払い、ついにはコングをストンピングで地面に縫い付け、
「これでしまいじゃ!おとなしく負けを認めんかいこのくそガキがぁ!」とばかりに吠える。
負けじとコングも意地を振り絞って「俺はまだやれっぞコラァ」とばかりに吠えるものの、ゴジラの返答は勝利宣言だった。コングから足をどけ、敗者にもう用はないとばかりに背を向けるゴジラ。
コングの、ホームグラウンドにおいての、完敗である。
唯一の救いは途中でコングもゴジラをダウンさせて一矢報いたところか。
途中で臆病者が「第2ラウンドはコングの勝ちだな」とのたまっていたが、あれはラウンド中のインターバルに勝利宣言をしたようなものである。
じゃあ、コングファンは不満かといわれると案外そうでもないのではないかと勝手に思う。
なぜなら、その埋め合わせとばかりに映画の最初から最後までコングには大幅な演出の尺が割り当てられ(実質的な主役といっていい。ゴジラはあくまで脇、敵役、ベジータだ)、やっぱりでてきた共通の敵メカゴジラに一転して追いつめられるゴジラを救出し、ゴジラと共闘し、コングの手でメカゴジラにとどめを刺すのである。
このパワーバランスというか、見せ場のバランスは双方のファンに非常に気を使って演出されていると思う。
なお本作のメカゴジラについては、実質メカキングギドラではないのかという声がある。が、実際のところは平成メカゴジラだってメカキングギドラベースの技術で建造されているし、映画に出てきた約半分(昭和、平成、3式、都市、本作のうち2機)のメカゴジラがなんらかの形でキングギドラをベースとしているわけだから、メカゴジラでいいと思う(詭弁)
◆見どころはどこだったのか?
山のようにちりばめられたパロディ、スピーディーな怪獣アクション、すこしコミカルな登場人物、
そして「お前らはこれが見たいんやろ!俺も!」と言わんばかりに人間ドラマ無視で怪獣に割り当てられる尺。
それらが本作の見どころであろう。どこが特に、というのは個々人によって異なるだろうが、個人的には以下の点が特にツボだった。
・芹沢の発音は「ゴジラ」。頑なに、「ゴジラ」
・ロボゴジラ!(まちがい)⇒違う、メカゴジラ!(訂正)
・四足歩行ゴジラ。新作が出るたびに新しい戦い方が増えるのはすごい。ゴジラのデザインをさほど崩さずに、だ。
・ゴジラ大好き娘、アース・ドーター(マディソン)。カエルの子はカエルというべきなのか。パパは泣いていい。
・感情豊かなコング。映画のしょっぱなから尻を掻き、あちこち連れまわされてゴジラにボコられては涙目になり、子供からゴジラは敵じゃないといわれて「マジかよ」という顔。かわいい。
・臆病者のリンド博士。いや、初登場時点からあんたはやる男だと僕にはわかっていたよ。でもね、最後の手話はグレイトだ。君はとっても臆病な子だ!思わず笑みがこぼれたね、ええ。
◆足りないものは何だったのか?
・BGM。どうにも印象的な音楽がないというか、本家ゴジラの音楽に寄せずともいいから、耳に残るBGMが欲しかった。特にスタッフロール。
・ほんの僅かばかりの尺。人間ドラマはいらないけれど、各キャラのバックボーンの解説はもう少し丁寧でもよかったのでは。特に、その、芹沢君とか。
・登場人物の知能(足りてなくていいんだ。綿密に計算されたお祭り映画なんだから。怪獣がズギャーンドゴーンズガガガーンでいいんだ。)
◆これは怪獣映画だったのか?
実は、ひそかにこの映画はヤンキー映画なんじゃないかと疑っている。
まあ、作ってるのヤンキー(原義。侮辱的なニュアンスを含むため使用には注意を要する。本項においては侮辱の意図はない。)だからな。
シマをまとめる呉爾羅高校に対して、乗っ取りを画策する私立エイペックス学園と、強引に巻き込まれた廃校寸前の髑髏島高専。
コングは骨のある巻き込まれタイプの主人公。狭い校舎で舎弟を守るためにセンコーの言うことを聞いていたが、そのセンコーがエイペックス学園にそそのかされちまう。
コング自身もゴリラ気取っちゃいるが、さすがにダチの一人もいないのは寂しいので廃校寸前の母校をあきらめ新天地を探しに出る。
ところが手前のシマから出ちまったもんだからさあ大変。辺りを牛耳るゴジラ番長に睨まれちまう。
おまけに番長はコングが知らないうちに一枚噛んでるエイペックス学園のことが大嫌いだ。
ゴジラは番長だからそれらしく振舞う。シマのオキテを破る奴はシメにいくし、武器を捨ててワビを入れれば許すし、骨のある奴は好き。
コングはゴジラにシメられたけど気合では負けなかったし、その後エイペックス学園のメカヤンキーからゴジラを助け男を見せる。
男になったコングは新天地へたどり着くのさ。どう?
◆結局のところ面白かったのか?
最高に。
◆おわりに
モンスターバースと呼ばれる一連の作品群は、これにて一度手じまいらしい。
次回作が「コングの息子」って噂もあるが、どうなるかはまだ未定。
願わくば、次も最高の怪獣映画が見られますように。
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