◆はじめに
あなたは毒素というフレーズを見たことがあるだろうか?
googleで「靴下 破れる 原因」「デトックス 出す」などと検索をすると、目にすることがあると思う。
しかし毒素とはそもそも何者なのか。
いかにもふわっとした言葉だ。”毒”と名のつくからには、なんとなく悪そうな雰囲気を漂わせているが、その実どう悪いのかは一切わからない。
”悪そう”というイメージだけを煽る、都合のいい言葉のようにも見える。
管理人自身たまにこの単語を見かけるので、興味を持って調べてみた。
少し長いが、読んでくれるとうれしい。
◆ウィキペディアによると
まず、ウィキペディアで調べてみた。
・毒素(どくそ、独: toxin)は、生細胞あるいは生体内で産生される有毒物質である。したがって、人為的過程によって作り出された人工物質は除外される。 -ウィキペディア 毒素-
「毒素 = 生き物が体の中で作る物質のうち、生き物に対して有害なもの」と捉えてよさそうだ。つまり、毒ヘビが持つ” α-ブンガロトキシン”のように特定の物質を示す用語ではなく、かなり対象は広い。ヘビの毒もフグの毒も、定義上は等しく毒素となる。
また、”生き物が体の中で作る”という点から自動車の排気ガスなどは毒素ではない(人体に対する有害性の有無は別の話だ、誤解なきよう)。
”生き物に対して”というところは注意するポイントで、ある生き物に対しては毒でも、他の生き物にとっては毒じゃないということがあるということだ。
例えば玉ねぎは犬にとって毒だが、玉ねぎは毒だから(ヒトが)食べてはいけないなどと主張する人はいないだろう。
◆毒素とは何者か
毒素を取り扱っている様々なページから、毒素がどんなものとして扱われているのか調査してみた。
調査もとのホームページやブログの固有名に関しては一応記録は付けてはいるが、トラブル防止の観点から記載しない。ご容赦願いたい。
・毒素=フグやじゃがいもの芽など、食品に含まれる毒物
・毒素=医学、薬学上の毒物
・毒素=毒蛇などの生物が持つ毒
・毒素=ボツリヌス菌など、食中毒に関与する細菌が生成する化学物質
・毒素=足の裏や指の間から出て、靴下に穴をあける原因になるもの
・毒素=デトックスで排出するべきもの
・毒素=肥満の原因となる”太る毒素”になるもの
・・・・どうにも困った。
上に挙げた例はどれも毒素という言葉こそ共通だが、それが意味するところは全くの別物である。さらに、前段で調べた毒素の定義に必ずしも当てはまるわけではないようだ。
毒素というだけでは、それが何を意味するのかさっぱりわからないのだ。
まともな人間や団体が作ったホームページ(記事)なら、毒素が具体的に何を意味するのかが書かれている。
たとえば農林水産省のじゃがいもの毒素に関して案内しているホームページでは、記事内で毒素とはソラニンやチャコニンといった化学物質であることが明確に記載されている。
警戒するべきはただ”毒素”とだけ記載があり、それがどういった化学物質なのか記載がない記事だ。
そのようなページは、毒素という単語を不安をあおるための道具として使っている(管理人個人の感想)。
ここからは、そのような警戒すべき”毒素”について紹介する。
◆足から出る毒素が靴下に穴を?・・・お前はトリコ?
インターネットを徘徊していると、靴下に穴が開く原因が足から出る毒素によるものとする記事が散見される。
結論から書くと、真っ赤な嘘だ(個人的意見)。
靴下に穴が開くのは、靴下と靴が擦れる摩擦によるものであって”毒素”なるものが原因ではない。人間の足から出るのは汗だけだ。
例外は、週刊少年ジャンプで長期間にわたり好評連載していた「トリコ」に登場する毒人間ココくらいだろう。
さて、記事に靴下に穴をあける毒素がいかなる化学物質であるかの解説がない場合、この時点で怪しいと考えていい。
また、靴下の材質はポリエステルやコットンなどいろいろあり化学的特性も異なる。つまり、毒素とやらに対する反応も違うはずなのだが、ここに言及している記事は見つけられなかった。
中には汗の中に含まれるアンモニアをして毒素としている記事がある。
だが、冷静に考えてほしい。アンモニアが含まれる可能性のある体液はもうひとつある。尿だ。汗のアンモニアで靴下が穴が開くのであれば、同じ理屈でパンツにも穴が開くはずである。あなたの思っている以上にパンツに尿は付着するぞ。
また、真実に汗のアンモニアが原因であるならば、穴が開くのは靴下だけにとどまらず、シャツやパンツといった下着にも穴が開くはずだ。
ついでに、これは管理人の個人的感想だが、通常はアンモニアは体内で尿素に変換される。汗や尿の中にアンモニアが含まれるのは体が処理しきれなかった分だけであり、靴下に穴をあけるほどの濃度になるとは考えづらい。
どうしても納得できなければ、要らない靴下に汗なり尿なりを毎日ぶっかけて放置してみよう。穴が開くことがあったら是非教えて欲しい。
◆デトックスで毒素を排出?・・・玉石混合。
デトックスに関しては、話が少し難しい。
デトックスとは、体内に蓄積された何らかの有害物質を体外に排出すべく人体に向かって働きかけることを言う。
有害な物質や排出のための働きかけかた多岐にわたり、物質ごとに有害となる量も異なる。
たとえば、毒物を嚥下した際に喉に手を突っ込んで吐かせるのだって、定義上はデトックスのはずだ。
ちなみに、デトックスは外国語で”解毒”という意味だそうだ。
まあ、正直に言ってこれは医学的な問題であり、詳細に論じられる知見が管理人にはない。無知ですまないと思っている。
だから、この項目は下記の通り簡便な記述にとどめようと思う。
・デトックスは可能な限り医師に相談しながら実施しよう。
・ネットに転がっている情報は玉石混合だ。99%は石だが。
・医者以外の人間がマトモな根拠で記事を書いているかは、一度考えるべきだ(本ブログも含む)
・というか、医師免許を持っている人間が眉唾な治療法に手を染めていることもある。大学病院など、公的機関あるいはそれに近い医師の意見を重要視したい。
・人体には有害物を排出する機能が備わっている。水を飲み、運動していればそうそう困らない。
・点滴やサプリ、薬品など金のかかる行為を推奨する記事は特に注意して読め(本ブログも含むぞ)
・積極的に自分を実験台にする必要はない。運動しろ運動。
チェックポイントを用意してみた。
□その記事を書いているのは医者あるいは医療機関か。
□公的機関(厚生労働省や大学病院など)がその治療法を承認しているか。
□記事内にエビデンス(根拠、証明)が明確に記載されているか。
□記載されたエビデンスは利害関係のない第三者の審査を受けているか
□手軽に健康になろうという欲望に目がくらんでいないか
これだけ確認しておけば、ハズレを引く確率はぐっと減るはずだ。
また、厚生労働省のホームページでエビデンスに関してわかりやすく案内してくれているページがある。ぜひ一読願いたい。
管理人は、これらのチェックポイントを用いていろいろな記事を読んだ結果、「水を飲んで運動するのが一番」と言う結論に至った。
◆太るのは毒素が原因?・・・いや、食い過ぎと運動不足が原因だよ。
太る原因を自分の食生活や運動不足以外に追い求めたい気持ちはよくわかる。
腹一杯甘いものを食べたいし、運動なんてめんどくさくてしたくない。夜遅くまで遊びたい。
毒素を身体から追い出して楽ちんに痩せられればいいな。わかるわかる。管理人もそう思う。
ところで、肥満の原因物質は化学的に特定されている。それさえ身体の中に入れなければ、太ることはほぼないと言っていい諸悪の根源だ。
その名は炭水化物。次点でタンパク質と脂質。この三つの物質を身体の中に入れさえしなければ、あなたはもう太ることはなくなるだろう。ぜひ、この三つを摂取しないように生活してみて欲しい。
・・・この文章を読んで管理人はバカなのかと考えた人間は正常だ。ちょっとでもへーと思ってしまった人間は直ちにその純粋さを見直して欲しい。
理屈で考えればわかることだが、人間は食べた量(カロリー)以上に太ることはできないのだ。
もちろん、太りやすさに関係する化学物質はある。たとえばインシュリンという物質がある。これは体内で糖質を脂肪に変えるしくみを担っている。体内でインシュリンが大量に存在した場合、肥満の原因となることもある。ちなみにこのインシュリンが十分に働かなくなると、血糖値の異常な上昇を招き糖尿病になる。
そのほかにも様々な物質が、脂肪の増加に関わってくる。しかし、単純に人体から”毒素”扱いして取り除いていい物質がどれだけあるのだろうか?
そして、仮に太る原因がその”毒素”であるならば、何も食べなくてもその毒素を摂取するだけで脂肪が増えていくことになるが、そんなことはあるまい。カロリーの吸収効率や食欲へ影響を与えることはあっても、だ。
毒素を気にする前に、食事量を気にしよう。食べ過ぎたら運動しよう。残念ながら、それが結論だ。
◆おわりに
今回は毒素なる物について調べてみた。
怪しげな情報や詐欺のようなブログ、とても参考になる病院のホームページに出会うことができて管理人としては有意義だった。
この記事を読んだあなたが毒について興味を持ち、日々の生活の向上の一助となるなら幸いである。
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